(ソース:Otafuku)
51歳のスペイン人指揮官は会場に集まったたくさんの記者を見回して言った。
「私は日本を世界一のサッカー大国にするために来た」
グアルディオラ監督のこの一言で会見場に静寂が訪れた。
世界一のサッカー大国。
そんな大それた目標を掲げる代表監督はこれまでいなかった。
1998年以前の目標はW杯出場権獲得だったし2002年まではW杯決勝トーナメント進出だった。
そしてそれ以後はずっとW杯ベスト8だ。
W杯優勝を目標に掲げた選手もいたにはいたが、代表の指揮官や日本の協会幹部の目標はいつの日も現実的なものだった。
しかし、この監督は違った。
それもよくよく考えれば、グアルディオラ監督が掲げている目標はW杯優勝よりもさらに上のものだった。
「日本は世界一のサッカー大国になるポテンシャルがある。世界一のサッカー大国になる為にまずは次のW杯で優勝する。W杯優勝は通過点に過ぎない。そこからが最も困難なプロセスだと私は考えている」
仮に2流3流の監督がこんな発言をしようものなら、会場の多くの記者たちは失笑したに違いない。
現に記者ブースに進んでいた大手スポーツメディアのライター磯山茂三も「何を言ってるんだこの新監督は」という声がすんでのところまで出かけていた。
しかし、今話しているのはグアルディオラだった。
日本を世界一のサッカー大国にすると話しているのは、世界一の名将グアルディオラなのだ。
磯山はグアルディオラの顔を目をじっと見つけた。
その目は冗談を言っているようには見えなかった。
「世界一のサッカー大国になるために必要なものは分かるか」
グアルディオラはゆっくりと会場に集まった記者を見回した。
(続く)